2006-12-30 -?????- in Fenrir |
今年ももう終わろうとしている。30日。今年の日記を書けるのもあと二回だ。 だから、たまには、少し……ほんの少しだけ、まじめな日記でも書こうか。 日記――といっても、毎日書いていたわけじゃないけれど。 |
■2006-12-10 あたしが、いつも見ていた日記を書いている人がいる。 その人もハンターを持っていて、がんばっているらしい。 この日、その日記が更新されていた。 現在Lv98の71%。 その人は一日3%近く稼げる人だから、最短であと十日。 応援したいと思っていたけど住む世界が違う。どうしようか。 ■2006-12-12 あたしがその人と同じ世界に生まれた日。 ハンターの人の発光式があるのなら、ハンターで行こうと決めた。 ……間に合わなかったら、アーチャーで行こう。決めた。 急がないとね。 駆け足、駆け足。 ハンターになるためだけに生まれたんだから。 ■2006-12-13 ――時間が止まった。 その人の日記に、『休止』の文字。 理由は書いてあった。納得した。 でも あたしは ナンデココニイルンダッケ? 頭の中が真っ白だったけれど、気づいたらフィールドにいた。 まだおわったわけじゃない、もうあえないわけじゃない。 もう少しがんばってみよう。 ■2006-12-15 まだレベル20をちょっと過ぎたあたり。 時間がない。あせるばかり。 アインブロックに移住した。フローラとジオグラフィーとメタリンばかりの山へ籠もるため。 少々阿漕だがそうもいっていられない。周りの人、ごめん。 ■2006-12-16 休憩から戻ってみれば、色とりどりのポリンたち。 この景色をこのまま切り取ってプレゼントできたらいいのに。 ああ でも あの人の一番好きなサンタポリンが いない な ■2006-12-21 この日が最期のチャンスだったのかもしれない。 その人のWEBページの掲示板に「明日明後日の夜少し入れるかもしれない」と書いてあったのを、『明日と明後日』なんて自分の都合で読み替えて、欲を出して狩っていた。 夜、その人の掲示板が更新されていた。 この日に行っていれば、会えたんだ……と思う。 ■2006-12-22 10日が過ぎた。 間に合ってしまった。 きっと、あの人の時は動いていないから。 昨日の夜読んだ掲示板。 一晩経って目が覚めて、ふいに怖くなった。 時間がない。 Job42になった。しようと思っていた目標のレベル。 だけど――いま思えば、それがいったい何になると言うのだろう? ハンターギルドは移転してフィゲルへ。 偶然でもこの間知っていてよかった。時間のロスが防げる。 時間がない。 窓の外の空はまだ明けていない。 プロンテラにいた同じサーバの商人・POLTAC、ペコからくちばしを集めてくれた剣士・HRATHNIRの力を借りて、走る。 全力で走った。 転職試験は技量と言うより、心で突破した。失敗は0。 時間がない。 冬の空でさえ白みはじめた。 あとはごらんの通りだ。 転職して、ハンターになった。 少し前に、剣士HRATHNIRが冒険をしていた時のお金があった。 POLTACに頼んで、プロンテラを歩き回ってもらった。 騎士になろうとがんばっていた剣士の装備は買えなくなってしまったけれど、名射手の林檎、草の葉。 ファルコンも借りた。 すべて、どこか違う世界のあたしに同じになれればよかった。 時間がない。 もう行かなくてはならない。 次にこの世界に入れるのは、夜になる。 「明日明後日の夜少し入れるかもしれない」という言葉を勝手に読み替えた自分自身に祈りつつ、ほんの少しの希望を信じつつ。 その人が、もうこの世界に来る理由は昨日で終わっていると知りながら。 夜はやってこなかった。 理由は、みんな知っていると思う。 「明日明後日」の『明日』は自ら手を放してしまった。 「明日明後日」の『明後日』は手のひらからこぼれ落ちていった。 「あたし」は眠りについた。 目が覚めても、今日の朝であればいいな、なんて夢を見ながら。 ■2006-12-23 その人がいそうな場所に座ってみる。 どうやら、知り合いの方らしい人に会えた。 あたしを知ってくれていた。 その人の日記のページつながりで知り合えた人は、 「その人はこの時間にはあまりいないからねえ……」とつぶやいた。 ありがとう。ありがとう。 笑顔で手を振って別れた。 この人もいつかは知ることになるんだろうか。 その人がもう、ここには来ないかもしれないことを。 ■2006-12-24 少しだけ、あの場所へ。 誰もいなかった。 ■2006-12-25 誰もいない。 ■2006-12-26 あの人のお友達の方がいらっしゃった。 声をかけることが出来なかった。 なんて言えばいいんだろう? |
■2006-12-30 たぶん、これで終わりだ。 もっとも、あたしがそこにいるなんてこと誰にも言ってなかったから当然だ。 (あたしが生まれた理由がそもそも、ね) もしもその人が戻ってきて発光式をするのなら、いつでも駆けつけることが出来る。いや、自分の性分だから、発光式を待てないで会いに行くかも。 もしもその人のお別れ会があるのなら、こっそり紛れ込むかも。 ――いや。お別れじゃないな。そう信じたい。 なんたって、その人はいま、違う夢を追っているらしいから。 サヨウナラじゃなくて、うーん、なんだろう? ああ、そうだ。 大事なことを言い忘れてた。 あたしの名前はぽてろんぐ。 顔も、服装も、装備も、出来ることも、あのぽてろんぐとほぼ同じ。 違うのは、いる世界がフェンリルだということくらい。 あたしはこうして生まれ、育ち、10日+一週間を経て眠りにつく。 もうしばらくはあたしがこの世界にいる理由がない。 いまはもう、この日記もみていないかもしれないけれど。 ほんの数回、お世辞かもしれないけれどあの人が好きだと言ってくれたこのハンターは、 いまもプロンテラのどこかで眠っています。 |
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